ボイル殺菌についてBoil sterilization lecture
そもそも、ボイル殺菌とは?
一般に、食品の表面や内部には必ず微生物(カビ、酵母、細菌等)が生息・付着あるいは混入しており、微生物の繁殖・増殖により腐敗変敗を引き起こします。食品を保存するためには、これら微生物に何らかの処置を施して除去する必要があり、その手段の一つに熱殺菌があります。熱殺菌にもいくつかの方法があり、広く使われている手法にボイル殺菌があります。
ボイル殺菌とは
ボイル殺菌とは食品を包装後、湯の中に入れて殺菌する方法で、いわゆる湯煎です。カゴの中に入れて、決められた温度の熱水槽に食品を浸して、一定の時間が経過したら取り出すという方法が一般的。
ボイル殺菌処理をする装置は『加熱槽 → 移替え → 冷却槽』を1サイクルとするバッチ式と、加熱から冷却槽への移し替えをトンネルやコンベアに委ねる連続式があります。
- ボイル殺菌の特徴は
- ■ 比較的簡単
- ■ 低コスト
- ■ 1サイクルで大量※に処理ができる
※生産状況に応じた槽の大きさ(容量)によります。弊社では槽の大きさ・数のカスタマイズに対応しています
ボイル殺菌の温度と時間
ボイル殺菌は水の沸点を利用した100℃未満の湿熱殺菌で、100℃以上の高温になるレトルト殺菌処理を行うと風味(食感・香り・色など)の劣化がみられる食品に適していますが、殺菌処理への温度と時間の条件は画一的なものはありません。 ボイル殺菌の対象食品の内容物や容器の大きさ、殺菌対象の微生物などにより、まさに千差万別なのです。
”熱殺菌”で、加熱空気によるものを ”乾熱滅菌”、 熱水や蒸気によるものを ”湿熱殺菌” といい、乾熱で160℃ × 30分間と湿熱100℃ × 30分間とはほぼ同等の殺菌効果があるといわれます。人が90℃のサウナに入ったりドライヤーを使ったりしてもヤケドをしないけれど、同じ温度の蒸気や熱水では短時間で大やけどになると言えばわかりやすいですね。
レトルト(retort・オランダ語、英語)のもともとの意味は、密封した食品を入れて加圧加熱して殺菌する装置(加圧加熱殺菌釜)のこと。転じてこの装置で殺菌することをレトルト殺菌といい、レトルト殺菌された食品をレトルト食品と呼ばれています。缶詰の殺菌方法としは19世紀後半から利用されていますが、袋入り食品への本格的な商業利用は「ボンカレー」以降といわれています。※レトルトという言葉には、このほかに物質の蒸留や乾留をする際に用いられる器具を指します。
『容器包装詰加圧加熱殺菌食品』の殺菌について
食品を保存する際の多くは、何らかの容器に入れられ保存されて 食品衛生法に定義される「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」は、pHが4.6を超え、かつAw(水分活性)が0.94を超える場合、120℃ × 4分間以上の加熱、もしくは これと同等以上の効力を有する方法が義務付けられています。これは、重大な食中毒を引き起こすボツリヌス菌による危害を基準として考えられたものですが、この菌は100℃では容易に死滅せず、加熱温度100℃の場合では殺菌に要する時間は360分。これでは食品にとっては明らかな過加熱となります。そこで必要に応じて水の沸点・100℃を超える加圧加熱殺菌(レトルト釜)を使い、短時間(120℃の場合3.3分間)での殺菌が可能になりました(この操作には専門的な知識が必要)。
一方、pHや水分活性が低い製品中では、ボツリヌス菌は発育することができない為、100℃を超える殺菌処理温度は必要としません。100℃以下の温度で死滅する易熱性の病原性若しくは腐敗性の細菌、カビや酵母などを対象とした低温殺菌を行います。低温殺菌(湯殺菌)による処理は、対象となる菌に対抗するだけの温度と時間で管理されます。
pH(ピーエイチ):pH値は、酸性・アルカリ性の強さを実用上の便宜から簡単な指数(水素イオン濃度の逆数の常用対数)で表したもの
Aw(水分活性):食品に微生物が利用できる水分(自由水)の割合を表す数値で、食品の保存性の指標とされる。真水の水分活性は「1」で表記は 1.000Aw(0.000~1.000Awの範囲で表される、
ボイル殺菌処理に向くもの
加熱殺菌の場合、ボイル殺菌とレトルト殺菌の。
pH4.6以下 (例)果実類 | Aw0.94以下 (例)ジャム、佃煮 |
pH4.6を超え、かつAw0. 94を超える (例)水産水煮、カレー、調理食品 |
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↓ ↓ | ↓ ↓ | ↓ ↓ | 100℃以下の低温殺菌(ボイル殺菌) | レトルト殺菌 |
容器詰加熱殺菌食品の加熱殺菌方法は、水産製品やカレーなどは ”レトルト殺菌” され、果実シラップ漬け、野菜水煮、つくだ煮など100℃以下の ”低温殺菌(湯殺菌)” されるものに大別されます。これは、重大な食中毒事故になる毒素型細菌のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の発育条件によるもので、食品の『pH4.6及び水分活性0.94』を境に、ボイル殺菌とレトルト殺菌に分岐されます。
HACCP(ハサップ)Hazard Analysis and Critical Control Point
HACCP(ハサップ)とは
- HACCPとは
- ・Hazard (ハザード)
- ・Analysis (アナリシス)
- ・Critical (クリティカル)
- ・Control (コントロール)
- ・Point (ポイント) の頭文字をとったもので、日本語では『危害分析重要管理点』と訳されたシステム・マネジメント。
- ■ 食品の安全性が向上
- ■ 競争力が強化し、衛生管理に根拠の伴う説明ができる
- ■ 組織全体の衛生意識の向上、一体化
- ■ 安全性の持続 、生産効率の向上 など、多くのものがあります
食品を製造する際に、要因を科学的に分析し これらの危害要因を除いたり、低減したりする工程を継続的に管理し、データとして記録しておく衛生管理方法です。これまで行われていた「抜取り検査」による安全管理に比べ、より効果的に、問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能になります。
「HACCP導入」の目的は? メリットは?
HACCPには、特に食品中のリスクを避けるための指針が定められています。つまり、微生物汚染や異物混入を防止するための工程管理がHACCPの目的ということです。
- HACCP導入メリットは、危害分析を行うことで、重点的に管理すべき個所を従業員が明確に把握することができるため
HACCP(ハサップ)導入の義務化
2018年6月13日「食品衛生法当の一部を改正する法律」が交付され、食中毒事案への対策強化やリコール情報の報告制度など大きく6項目が示されていますが、その1つに「ハサップ(HACCP)の導入」が原則としてすべての食品等事業者に義務付けられることになりました。
原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする。 中略
施行時期:公布の日から起算して2年を超えない範囲内において定める日
【追記】2019年10月9日に施行期日が公表され、『改正食品衛生法』は2020年6月1日に施行されます。(1年間の猶予期間後、2021年6月1日に完全に義務化)
出典:厚生労働省|食品衛生法の改正について|概要はこちら
HACCP導入への支援
HACCP導入には 厚生労働省のホームページには、HACCPの施策や、食品等事業者団体が作成した導入のための業種別手引書が掲載されています。ご参考まで。
また、『HACCPを導入する』ことと、『第三者機関によるHACCPの認証・認定を取得する』ことは異なります。